消費者金融の知識
SFCGの強引な強制執行認諾付公正証書取得方法は、行政でも問題視され、法務省から「公正証書作成にあたっての手続きの適正化」として、公正証書作成手続きが厳格化されるなどの影響を及ぼした。
また、金融庁の 「貸金業制度等に関する懇談会」(第6回会合)でSFCGの貸付・回収方法について債務者からの発言が取り上げられるなど、高金利貸金業者に対する行政のこれからの対応が注目される中、金融庁はSFCGがその顧客が気づかない間に白紙委任状を作成し、それによって作られた公正証書を使った債権回収を行う手法が、重大な貸金業法違反だとして、平成17年11月25日、業務停止命令を発出し、平成17年12月5日から16日まで(東京支店と大宮支店では12月26日まで)、SFCGは全部の業務((約定返済期日に返済するための振込用紙の送付に関する業務を含む。)、訴訟又は調停に応ずる業務及び関東財務局が特に必要と認めた業務を除く。)ができなくなる事態になった。
今回の業務停止処分は、大宮支店が200万円の連帯保証契約を交わした連帯保証人に対し、白紙委任状を使って594万円保証した旨の公正証書を作成し、連帯保証人の預金ならびに生命保険の差し押さえを行った事案(白紙委任状の取得禁止(貸金業法第20条違反))と、東京支店が債務者が借り入れ後に購入した不動産に対しなんらの通知もなく担保権の設定を行った事案(契約書面の不交付(貸金業法第17条違反))である。本来であれば、大宮支店と東京支店のみの営業停止処分が考えられるが、金融庁によれば大宮支店の事案と同様の白紙委任状が全国各地の営業所で75件見つかったため、会社ぐるみで法令違反の債権回収を指示していたと認定し、全支店の営業停止処分に踏み切ったとしている。
SFCGは「法令違反の事実はない」と、東京地裁に行政処分取り消しの仮処分の申し立てを行ったが、同地裁のSFCGの債権回収手法に対する判例・態度等等から予測されたように、仮処分は認められなかった。SFCGは、東京高裁に即時抗告を行ったが、それも認められず却下された。SFCGは、さらに最高裁への特別抗告を検討中としていたが、特別抗告は行われなかったようである。
最近の、金融庁「貸金業制度等に関する懇談会」の動向を見ている限りでは、SFCGを含めた「高利貸」を規制し、さらに「利息制限法」以上の利息を払わないことによる「不利益」を与えない旨を契約書に記載すべきという、日弁連から「「貸金業の規制等に関する法律施行規則の改正を求める」意見書(要望)」が出されるなど、「高利貸」借入者保護の立場からの発表が多数取り上げられていることを鑑みると、「利息制限法」以上の利息を取る(いわゆるグレーゾーン)事ができなくなるという事態も容易に想像できる。
このように、高利貸への規制強化の要望・判例が続く中、平成18年1月13日に最高裁が「期限の利益喪失」条項がある場合、みなし弁済は認められないとの判決を出した。この判決は、利息制限法で定められている以上の利息を支払わないことを理由に「期限の利益喪失」があったとして、債務者に一括弁済を迫る条項がある以上、債務者の任意による「みなし利息」の支払いに当たらないとした判決で、グレーゾーン利息で営業している金融業者の根源を揺るがすものである。 この判決に対応して、平成18年2月8日金融庁は、“「貸金業の規制等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令(案)」の公表について”を発表した。
主な改正内容(案)は、以下の通りである。
これに関し、貸金業の規制等に関する法律施行規則(以下「規則」という。)15条2項は、弁済を受けた債権に係る貸付けの契約を契約番号その他により明示することをもって、これらの記載に代えることができる旨規定しているが、これを削除する。
法21条2項の支払催告書面についても、規則19条4項に同様の規定があるが、これを削除する。
法17条1項の契約締結時の書面については、規則13条1項1号ヌにおいて、「期限の利益の喪失の定めがあるときは、その旨及びその内容」を記載することとされているが、これに「(利息制限法1条1項に規定する利率を超えない範囲においてのみ効力を有する旨)」を追加する。14条1項1号カ、14条2項8号、26条の5 3号、26条の10 3号、26条の15 3号、26条の21 3号、26条の23の7 5号、26条の23の10 5号、26条の23の13 5号、26条の23の17 5号においても同じ規定を追加する。
この通りに改正されると、みなし弁済によるグレーゾーン金利を取ることは事実上できなくなる。
また、平成17年4月21日の「貸金業制度等に関する懇談会」では、グレーゾーン金利の廃止と、上限金利の引き下げの方針が大多数の委員の支持を受け示されたが、貸金業関係者の反発(金利引下げにより、闇金被害者が増える)があり、中間答申としては貸金業者側の意見も併記されることになった。しかし、会議中、貸金業者側の上限金利引下げ方針に対する激しい反発に対し、委員長から貸金業者サイドが戒慎される一幕もあったという。